時計の針は22時を回ろうとしていた。女の一人歩きには少々物騒な時間だ。
菊地五希は、明るい街灯に照らされた通りを拠って、帰路に就いていた。
ちょっと食べ過ぎだな、と思う。胃が結構重い。同時に喉の渇きも半端でない。
今日は、高校時代の旧友と久々に会って食事をしていた。その中にあったペッパーポテトが殊更に堪えている。
これでもか、とばかりに振りかけられていた黒コショウを、未だに引きずっているのだ。
さすがに、この時間なので、どこかでコーヒーでも・・・と言うわけにもいかず、バーで飲み直そうかとも思ったが、あいにくこの付近には知っている店はない。
そんな迷いに包み込まれていると、余計に喉の渇きが増してくる。極限にカラカラだ。
もう、水分なら何でもいいわ、と思って辺りを見回すと、ちょうど斜め前にある公園の入り口にある自動販売機が目に付いた。
ああ、お茶でいいわ、むしろお茶、と、スラックスのポケットから、先ほど煙草を買ったお釣りのジャラ銭を幾枚か取り出すと、横断歩道を渡って自動販売機へと向かった。
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by landr40
| 2017-07-31 23:06
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