ショートショート100本勝負


by landr40
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♯68 キスだけはいや

いよいよ、ミキワメ期間が終了という事になる。
今となっては、何がきっかけだったかよくわからない。ただ、僕もリコも必要なものが一致したのであろう。
そして、そこに金銭の授受と言う割り切った関係が存在すると言う事だ。

取り交わした契約は、1ヶ月である。
僕はリコを1ヶ月の間、3回まで好きにする事ができる・・・そういう契約を交わしたのだ。
そして、今日がその最終日である。
双方に合意があれば、契約の延長もありうるのだが、この時点で僕はどちらとも決め兼ねていた。

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# by landr40 | 2013-04-02 22:35 | ショートショート

#67 キラーフレンズ

大学に入学してから感じる、この寂寞とした、肌が凍るような感覚は何なのだろうか?
満員の通学電車に揺られて、キャンパスに降り立つとそこは別世界である。
電車内に漂う濁ったタバコや濃い化粧の匂いと比較すると、ここには、とても洗練された空気がある。
しかし、それが今の自分にそぐうものとは、到底考え難い。

少なくとも、自分はエスカレーター式に大学に進学したつもりはない。この場所に何かを掴みにきたのだ。
それは大学に進む人間はみんな一緒だと思っていた。・・・それなのに、周囲に漂うお気楽感は何なのだろう?後ろに固まった学生の笑いのコダマを背中に受けて、仲井未織は一人ポツンと前列で講義を受けていた。

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# by landr40 | 2013-03-30 12:06 | ショートショート

#66 ヨモとシロとブ―

ある小さな家庭に姉と妹と弟がいた。
みんなオカンは一緒だが オトンはそれぞれ別にいた。

整った顔立ちの気品あふれる妹。
頭は一番悪いが、真ん丸太った愛嬌ある弟。

それとひきかえ、姉には明らかに要らない血が混じっている。
キミは自分の醜さと、それが受け入れられない世間をきっと感じていたのだろう。
それゆえ姉が一歩でも家から出る事はなかった。

自分の居場所はここしかない。
姉は家では女王だった。

女王は一人しか存在しない。
そんな女王は、広い世界から帰ってきた妹や弟をよくいじめていた。

あなたたちには外がある でも私には内しかない。
20坪足らずの私の世界に笑顔で踏み込むことは許さない。

やがて弟がいなくなり、そして妹も旅立った。
姉の知らない世界に向けて、彼らは笑顔で旅立った。

妹や弟やオカンやオトンが走り回った世界はどんなだろう。
見上げても見上げてもまだ届かない空の先はどこにつながっているんだろうね。
テーブルの下の暗がりで姉は体を丸めていた。

END
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# by landr40 | 2013-03-30 11:19 | ショートショート

#65 戦場の観覧車

作戦本部から下された無為な指令に僕は反発した。

!大事なモノを犠牲にできない、そして僕も犠牲にならない。
!例え反逆罪に問われようと 大切なものは守り抜きたい。
!それが敗北に結びつこうとも 卑劣な手段の勝利など望まない。

だから僕は心に決めた 信じるもののために闘おうと。

やがて同志が現れた。彼らは何度も折れそうになった僕の心を支えてくれた。
体制を覆すコミニュティ・・・それを僕たちは正義だと語り合った.

そして、機は熟した 僕は切り込み隊長となり体制に挑んだ。

鯨の胃袋はとてつもなく大きかった。僕はピノキオのようにその巨大さに圧倒されつつあった。
でも決して負ける気はしなかった なぜならば僕の心には正義があったから。

振りかざし続けた剣は 既に錆びつき朽ち果てていた。
けれども正義のコミュニティには援軍が現れなかった。

流し続けた血は排水と一緒になり緩やかに下水道を潜っていった。
もう僕は動けない 心臓を打ち抜かれた僕は動けない。
そんな僕をコミュニティが取り囲む。
僕には彼らがはるか上空の観覧車に乗っているように見えた。

今頃だから語れる本音 彼らは新たなコミュニティを求めて消える。

やがて僕は現実と夢物語を区別できなかった自分を知った。
その時には僕の心も体も、吹けば飛び散る塵と化していた。

END
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# by landr40 | 2013-03-30 11:02 | ショートショート

♯64 レモンハイの女

ジョッキには、レモンハイがなみなみと注がれていた。
カウンター席に独り座る仲井未織は、目の前に置かれたジョッキの縁に口をつけると、肺活量だけで中身を吸い上げた。
氷とガラスの接触する心地よい音が静かな店内に響く。
そして、そのまま1/4ほどを飲み干すと、胸を反らせて一息ついた。
爽やかな檸檬の香りと粘つくようなアルコールの薫りが、一体となって彼女の食道に刺激を与えた。

仲井未織の前には、食べ散らかされた串が数本と、たった今注がれたばかりのジョッキがある。
やや年季の入ったカウンターにひじから体重を持たせかけると、微かにミシッと言う音がした。
仲井未織は、ジョッキを手に取ると、冷えたレモンハイを喉の奥に流し込んだ。

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# by landr40 | 2012-11-05 21:04 | ショートショート