ショートショート100本勝負


by landr40
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#73 ソーハッピー

私の兄は世間を震撼させた連続通り魔殺人の実行者だった。
その日、兄は、コレクションしていたサバイバルナイフの中でも、一番のお気に入りを手にして、ある一家を惨殺した。
逮捕された兄が語った動機は「幸せそうだったから」だった。
その一家は、重態となった彼を除いて、その妻と子供二人、同居していた母親も、兄に無残に殺された。
私もまた、息子の凶行に発狂した両親が、揃って自殺をした。また、当然のことながら、兄も死刑判決を受けた。
彼も、そして、私も、被害者と加害者の違いはあれど、独りになってしまったのだ。
そして、今、私は病院のベッドで動けない体を横たえている彼の傍にいる。


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# by landr40 | 2017-07-24 22:24 | ショートショート | Comments(0)

#72 竜陽光

僕の頬に先生はそっと唇を寄せた。カールの入った長い髪の先端が僕の耳をくすぐる。
「さて、そろそろ教室に戻りなさい」
薄暗い保健室の中で、僕の傍らに横たわっていた先生は、ゆっくりと起き上がると、窓を覆っていたカーテンを両手で開けた。
途端にまぶしい陽光が部屋に注ぎ込み、僕は思わず手で目を覆った。
その時、手のひら越しに僕は確かに竜を見た。


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# by landr40 | 2017-07-17 20:46 | ショートショート | Comments(0)
「と、言う感じでどうかしら?」
「ちょっと待てーぃ!」
 すかさずレッドにイエローがツッコミを入れた。
 初夏の爽やかな風が、校舎の屋上に吹き抜ける。ちょうど、給水タンクの横に茣蓙が敷かれて、そこに4人の女子高生が座っていた。茣蓙の真ん中には、色とりどりのおはじきがいくつも転がっている。
 イエローは思わず立ち上がると、レッドを眼下に見据えてがなり立てた。
「だいたいね、何で学園祭の出し物が、そんな演劇になっちゃうのよ!」
 お下げをぶんぶん振り回して怒るイエローに対して、レッドが、ポニーテールを揺らしながら、さもありげに答える。
「あら?自由の女神同盟のアピールにはもってこいだと思うけど?」
「だから、自由の女神同盟じゃなーい!ここは、おはじき部だっつーの!」
 よく見ると、給水タンクにはでかでかと「自由の女神同盟本部」との貼り紙がされていた・・・が、よく見ると、その貼り紙の下には「おはじき部部室」の文字が透けて見えている。
 お下げのイライラを全く意に介さないように、ポニーテールが言う。
「おはじき部?ああ、そんなものもあったわね」
「遠い目をして虚空を見上げて、過去の話にするんじゃなーい!」
 情緒不安定気味に怒りまくるイエローが、おはじき部部長こと高梨まひる16歳。
 柳に風と受け流すレッドが、自由の女神同盟リーダーこと仲井未織高校1年生である。
 一応、学校の帳簿上では、二人はおはじき部(仮)部員である。



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# by landr40 | 2017-07-16 23:50 | 中篇 | Comments(0)
「ひとつ、辛ければ辛いほど、苦しければ苦しいほど、女神は笑顔を忘れない」
レッドは腕をすっと横へと伸ばした。
「ひとつ、病める時も悲しみの時も、女神は決してあきらめない!」
次の瞬間、レッドは床に転がっていたシュークリームをつかむと、ミチルの顔面へと押し当てた。
「ぐは!?」
真っ白なクリームに視界を奪われたミチルの体が揺らぐ。その隙に、レッドは素早く上半身をねじって地面を滑り、ミチルの馬乗りから体を脱出させた。
しかし、まだ下半身へのダメージは残っている。ミチルはクリームを拭うと、未だ起き上がれないレッドにACアダプターを向ける。
「味な真似をしてくれる。だが状況は変わらない。こうなったら、じわじわと辛さと苦しみと病みと悲しみを存分に満喫させてやるわ!」
その突起がさらに伸びる。サーベル状になった突起からは、電流がスパークし青白い火花が散る。
だが、地面に胡坐をかいたレッドは、全く動揺せず、あまつさえ表情に笑みさえ浮かべている。その姿が、ミチルの逆鱗に触れた。
「その余裕、むかつく!むかつく!むかつく!助けてくださいと命乞いしろよ!痛いのは嫌いですと泣き叫べよ!なぜ、あんたは笑っていられる!?」


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# by landr40 | 2017-07-12 22:43 | 中篇 | Comments(0)
神野ミチルは、学生街の喫茶店「MonAmur」で、ラップトップPCを開きながら、アッサムティーとシュークリームを楽しんでいた。時折、ディスプレイに映る画像を見てほくそ笑む。それは、いろんな人間の、他人には見せられないであろうあんな姿やこんな姿のものだった。
だが、画像のチェックに夢中になっていたミチルは、ふと背筋に悪寒のようなものが走るのを感じた。
・・・空気が変わってきた。
窓の外に目をやると、先ほどまでにぎわっていた人通りが、いつしかぴったりと途絶えている。
さらに周辺を窺うと、店内にはすでに客が一人もいなかった。それどころか、店員までも。
・・・何かが始まる・・・いやな虫の知らせを感じたミチルは、PCを閉じると、所在もわからぬその空気を作っている主に喋りかけた。


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# by landr40 | 2017-07-11 22:46 | 中篇 | Comments(0)